今回は運用保守フェーズの進め方の概要について共有します。
運用保守フェーズは軽視されがちだけど重要な期間
システムをリリースした後は、いよいよ構想立案フェーズで想定したメリット(売上・利益増、業務スピード向上、コスト削減 等)を享受する時期です。
メリットを享受し続けるためには、システムが安定稼働し、ユーザーが問題なく新しい業務を行えるようにすることが必要です。
ゆえに運用保守フェーズにおける一番重要な責務は安定稼働であり、そのために後述する運用作業と保守作業を行います。
ちなみに、この運用保守フェーズですが、重要なフェーズであるにも関わらず、SIerに所属するSEの多くが軽視したり、やりたがらないように感じます。
その主な理由として考えられるのは以下のとおりです。
- 障害はいつ発生するか分からず、発生したら基本的に緊急で対応が必要なこと
- 障害の影響度合いによって、深夜や土日も緊急対応が必要な場合があること
- 運用保守作業の中には平日日中にできず、深夜や土日の対応が必要な場合があること
- 安定稼働していると、毎日同じことの繰り返しになって退屈になってしまうこと
たしかにシステム開発を行っている方がITの知見や経験も溜まりやすく、なおかつクリエイティブな仕事であることから、システム開発だけやって運用保守はやりたくないという方が多いのは自然な事かもしれません。特に若手の方にはその傾向が強いように感じます。
ただ、個人的には若い人ほど、1〜2年など期間を区切って運用保守フェーズを経験しておくことをオススメします。
その理由は次のとおりです。
- 運用保守フェーズを経験していると、システム開発の際に運用保守の観点が加わりより良い設計ができるようになるため
- 運用保守フェーズではユーザーからの声を直接聞けることで、ユーザー視点で物事を考えられるようになるため
- 新しいシステムの話は運用保守をやっている中から出てくるので、位置付けとして構想立案フェーズの更に前の超上流フェーズにあたるため
システム開発しか経験のない方は、ITやシステムの内側に視点が偏ってしまい視野が狭くなりがちです。
一方、運用保守を経験している人は、実際に使う人の視点や運用保守をより効率的に実施する観点から、システムの外側や使われ方についての視点も踏まえて検討・意見が出せます。
そのため、お客様から見た時に深みや信頼感が増します。

私がこれまでシステム開発に携わってきた中で優秀だと感じた人は、運用保守フェーズをくぐり抜けて来ている人が多かったです。
さて、それでは運用作業と保守作業について、もう少し詳しく見てみましょう。
運用作業はシステムを稼働し続けるのに必要な作業
運用作業は、システムを稼働し続けるために必要な作業です。
例えば、
- システムの稼働状況を監視する
- システムに障害が発生した場合に、関係者へ連絡して障害を復旧させる
- システムのユーザーが増減する際に、ユーザー登録・削除を行う
- マスターデータの登録・更新・削除を行う
- ユーザーからの問合せに対して対応を行う
等々
があげられます。
運用作業は、コストを抑えること、作業ミスを抑えること、素早く作業が終わることが理想です。
そのための有効な手段は、作業を自動化し人手を介さないようにすることです。
例えば、
- システム監視の運用製品を導入することで、監視作業を自動化する
(何か異常が発生した際に運用保守担当者へ通知がされる) - システムに対するユーザー登録・削除は、画面からユーザーが(自身が権限を持つユーザーのみに対して)実施できるようにする
- マスターメンテナンス機能を用意し、ユーザーが画面から(自身が権限を持つマスターデータのみに対して)登録・更新・削除できるようにする
等々
をすることです。
一方で、自動化を行うためには製品の導入やシステム開発の必要がありますので、その分 システム開発フェーズのコストが増えたり、スケジュール(工期)が延びる影響があります。
従い、コスト試算を行い、費用対効果(システム導入のメリットが出せるコストはいくらまでか)や期日の制約(リリース日を延期することによる影響を考慮する)によって、効果の高いものから順にどこまで自動化を取り込むかを判断します。
保守作業はシステムを維持したり改善する作業
保守作業はシステムを維持したり改善する作業です。
例えば、
- サーバー・OS等の製品に対して、セキュリティアップデートやバージョンアップを行う
- アプリケーションの機能改善や新機能追加を行う
などがあります。
アプリケーションの大規模な機能改善や、サーバー・OS等の製品バージョンアップ作業については、毎月の運用保守フェーズ作業の中で収めるのが難しいボリュームになることがあるので、その時は新たに予算を確保して対応を行うこともあります。
まとめ
運用保守フェーズのやることは、大きく2つに分類されます。
- 運用作業
- 保守作業
運用保守フェーズで一番重要なことはシステムの安定稼働です。
ユーザーが、必要な時にストレスなくシステムが利用でき、何か疑問点や困ったことがあった時にシステム担当者に問合せをすればスムーズに解決する、そのような状況ができると理想的です。
もちろん人間のやることなので、トラブルが発生したり、ユーザーが不満に思うこともあるかもしれませんが、それを最小限におさえられるよう、日々最善を尽くし振り返り・改善していくすることが大切です。


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