初めてのプロジェクト管理をした時の思い出
今日はシステムエンジニアに関するネタです。
最近初めてプロジェクト管理をする役割(リーダーやプロジェクトマネージャー)に指名された方、今後プロジェクト管理ができる役割にステップアップしたいと思ってらっしゃる方、いらっしゃいますか。
そのようなプロジェクト管理の初心者の方に向けて、プロジェクト管理で重要なことは何かを、私の経験からお伝えしたいと思います。
尚、プロジェクト管理は奥が深い分野ですので、本記事ではほんの触りの部分だけになりますが、一番重要なポイントだと思いますのでご了承ください。
私が初めてプロジェクト管理を任されたのは、20年ぐらい前に建設業のお客様の基幹システム(会社の中で中核となる一番大きなシステム)の再構築プロジェクト(現行システムの老朽化に伴う刷新を行うプロジェクト)に携わっていた時でした。
そのプロジェクトにおいて、私がいた会社は基幹システムを構成するサブシステムの一つである、”資産管理システム”の開発担当でした。
(基幹システムは受発注管理、在庫管理、生産管理、会計など色々なシステムが集まって一つの基幹システムを構成しているのが一般的です)
そのプロジェクトでは、我が社は二次請けの会社で、一次請けの会社さんが設計・開発した機能をベースに、我が社は別の似たような機能を横展開して量産開発する役割でした。
そのプロジェクトにおける我が社の体制は、4つ上の先輩が我が社のプロジェクトマネージャーでした。我が社の社員は先輩・私・後輩の3名、その他はビジネスパートナー(協力会社)の方々で、全部で10名ぐらいの体制でした。
技術的には、当時でも珍しかったオブジェクト志向型のデータベース(DB)を用いて、クライアントもブラウザではなくJava言語でアプリケーションを開発するという、かなりマニアックなアーキテクチャーで、いろいろ苦戦しながらも、みんなで支え合って何とかお客様に納品できました。
ちなみに私の役割は、Javaの技術に精通していたので技術担当となり、ビジネスパートナーさんが仕上げた設計書/プログラムをレビューしたり、技術的なことでわからないことが出てきたら、お客様側の技術担当者と相談して解決するような役割で、個別のタスクを持つことなく、何か問題・課題などのイベントが発生したら都度解決に奔走していました。
納品後、システムに対する追加開発のプロジェクトが実行されることになり、改修規模の小ささから私と後輩の二人だけがプロジェクトに残り、その時に初めてプロジェクト管理を担当しました。
当時はプロジェクト管理の教育なんてまるでなく、先輩の見様見真似で実施しました。が、結局右往左往するだけで全く管理なんてできず、スケジュールは遅れまくりでした。また納品間際では、金額計算結果が1円合わない問題(これは実は最初に納品した時からあった不具合でした)も発生し、初めて72時間ぶっ続けで仕事をする羽目になりました。三日も寝ないで仕事したのはこれが最初で最後です。
プロジェクト管理で重要なことは、お客様と合意した為すべきことを、期日までに、予算に収まるように調整しながら達成すること
みなさんが上記のような状況だったら、どのように振る舞われるでしょうか。
私はこれまで15年ぐらいプロジェクト管理をやってきたので、今タイムマシンであの時に戻って若き”むぅさん”に横でアドバイスすることができたら何と声をかけるか、と考えてみました。
まず声をかけるとしたら、
「プロジェクト管理で重要なことは、お客様と合意した為すべきこと(品質)を、期日まで(納期)に、予算(コスト)に収まるように調整しながら達成することだよ。今回のプロジェクトに当てはめるとどうなるかな?」
です。
「お客様と合意した為すべきこと」は、大抵はお客様と合意した仕様通りに成果物を作成することでして、今回の場合は追加機能に関する設計書、プログラム、テスト仕様書・結果でした。
「期日までに」は、たしか1ヶ月後の水曜日まででした。
それまでに、”設計”して、”開発”して、”テスト”して(不具合が見つかったら修正)、納品して完了です。
“設計”では作る設計書のタイトルは何か(どれぐらいの数・規模の設計書の修正が必要かを把握します)、”開発”ではプログラミングする機能は何か(どのぐらいの数・規模のプログラム修正が必要か把握します)、”テスト”はテスト仕様書を作成してテスト実施して不具合が見つかったら直して再テスト(どのぐらいテストシナリオがあって不具合対応にどれぐらい余裕を持っておいた方が良いかを把握します)、を書き出します。
以上の段取りを1ヶ月後の水曜日までに完遂する為には、それぞれいつぐらいに終わっていないといけないか、作業量を考えるとスケジュール的に無理があるところはないか(あるならどう調整するか)、の見通しを立てておくと良いです。
「予算に収まるように調整ながら」は、今回の予算は自分と後輩がプロジェクトの作業を実施する2人月(作業量のことを工数といい、1人が1ヶ月働く仕事量のことを人月(にんげつ)といいます)の費用(数百万円)です。
トラブルなどで別途要員の追加が必要になったり、作業が遅延する(=作業期間が伸びる=工数が増える)と赤字になってしまうので、気をつけないといけないところです。
契約時に大まかに作業内容に対して見積もってその工数(作業量)を見込んでいるので、作業する内容が変わらなければ苦しくなることはないはずです。言葉を変えれば、当初想定したことに加えて他のこともやることになってしまったら作業量が増えて苦しくなるので、当初予定していなかった作業が入ってこないように注意することがポイントです。もし追加の作業が必要になったら、スケジュール・コストの見直しをお客様と相談するように動くいた方が良いです。
当時も一応スケジュール表(WBSという作業管理表)を作っていましたが、正直それまでは遊撃隊な動きをする役割だったので、スケジュール表はあまり見ておらず、日々発生した出来事にがむしゃらに対応していました。今振り返れば、もし「いつまでに何をしないといけないか、というメインの作業を頭に入れた上で作業する」ことができていれば、余計な作業は後回しやお断りして、スケジュールに余裕を持ってプロジェクトを進められたと思います。
そのような状況に加え、プログラミングした後のテストで、金額の計算結果が1円合わないという不具合が見つかりました。しかも広範囲に渡ってです。
なぜだろうと後輩と調査した結果、追加開発する前のプログラムの段階からプログラミングの仕方がマズいことが原因で、端数が出た場合1円合わなくなるという潜在的な不具合が潜んでいたのです。原因や影響が分かった段階で、先輩や上司と相談しました。元のプロジェクトが請負契約という”納品後一定期間に不具合が見つかったら無償で修正する契約”だったので、我が社の不備ということで、納期に間に合わせる為に援軍として若手の子を一人入れることになりました。ただ、システムの内容が複雑なので数日入っただけで何も知らない若手の子が戦力になるはずもなく、また予算が変わるので社内の事務手続きも発生し、正直逆に足をひっぱられる結果となりました。
何とか納期までに仕上げようと、後輩と72時間ぶっつづけで作業を進めましたがそれでも終わらず、結局 木曜日の朝(=納期の翌朝)に電話でお客様へ状況を報告しました。実は1円合わない問題はお客様には何も報告していなかったので、とてもビックリされ、そして呆れられてしまいました。ただ良いお客様だったので「まずは一旦寝てください。納品は数日ずらしてもらっても良いです」と言って助けて頂きました。その日は自分の不甲斐なさに落ち込みつつ、睡眠不足も相まってフラフラな状態で帰宅し、家に帰るなり泥のように眠りました。
このような状況になった場合、今の自分だったら、まずはスケジュール(WBS)を最優先で作業を進め(それ以外の作業は後回しかお断り)、テスト時に発生した影響範囲の大きい不具合の対応(=作業範囲の変更)については、上司とお客様に状況と今後の見通しを報告しつつ、納品日をずらすか機能単位で五月雨式に納品させて頂くように調整するか(=納期の調整)、早めに人を投入してスケジュールを守るか(=コストの調整)、その合わせ技か、という感じで調整することで、みんなのダメージを最小限にする形で調整すると思います。
まとめ
プロジェクト管理の定義や詳しい話については、PMBOK(Project Management Body Knowledge)で一般的に正しい考え方や手法を学んで頂いた方が良いので、そちらを御覧ください。(ググったり、AIに聞けばいっぱい出てきます)
私がこれまでの学習や経験から学んだことは、プロジェクト管理とは「品質、納期、コストを遵守した形でプロジェクトをゴールする!その為に、必要な考え方や手法を身につけ行動して、プロジェクトをコントロールすること」だと思います。つまり、お客様が望むゴールに満足して到達する為に、必要な手立てを立ててコントロールすること(=自分の行動でプロジェクトを良い方向へいつでも軌道修正できるようにすること)です。
プロジェクト管理に関して、私のバイブルは以下の大場さんの書籍です。この書籍にはプロジェクトをお客様視点・SIer視点両方から記載されており、プロジェクト運営の全体像や具体的な成果物サンプル、運営方法が載っています。私がプロジェクトマネージャー、統括プロジェクトマネージャーを担当していた時もこの本の内容がとても役に立ち、特にお客様視点で会話できるようになるのでお客様から信頼して頂けるようになりました。これからプロジェクト管理を行う方にはおすすめです。
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